ベテランの士業の先生が、「ホームページなんてなくても仕事が回っているよ」と話すのはよくあることです。
そう聞いて、「じゃあ自分も作らなくていいかな」と思った先生はいませんか?
たしかに、ベテランの士業の先生の多くはホームページを持たずに、紹介や長年の顧問契約だけで十分に仕事を回しています。そうした状況では、Web集客の必要性を感じないのも自然なことです。
ですが、忘れてはいけないのは、ベテランの先生には“すでに仕事が回る仕組み”ができあがっているという点です。
一方、開業したばかりの士業の先生には、まだその土台がありません。果たして、そのまま言葉を鵜呑みにして、ホームページを作らなくていいものでしょうか。
実は、大きなトラップ(罠)なんですね。
この記事では、士業専門ホームページ制作を行っている「親和ホームページ」代表の前原が、なぜ新人の先生が“ベテラン士業の先生と同じようにホームページを持たないと痛い目に遭うかを、マーケティングの視点から解説していきます。
ベテランの先生がホームページを作らなくてもいい“カラクリ”
「ホームページなんてなくても仕事は回っている」と話すベテランの士業の先生は少なくありません。実際、ホームページを持たずに経営が成り立っているケースもよく見られます。
ただし、それは、すでに仕事が自然と紹介で回る仕組みができているからです。
たとえば、開業30年の税理士A先生は、顧問先20社で手いっぱい。新規の相談はすべて既存の顧問先からの紹介で年に2〜3件。Web集客の必要性を感じていません。
弁護士のB先生はスタッフ1名と運営。「すでに紹介や、つながりで依頼が来てる。さらに、ネットからの問い合わせが増えると、新たなに人を雇わないといけない」として、営業を広げる気はありません。
こうした先生方には、すでにお客さんを紹介してくれる仕組みがあるのです。信頼関係がある顧問先があったり、新しい仕事を頼んでくれる同業者、紹介してくれる経営者さん達がいます。いわば、営業の“地盤”がしっかりしている状態です。
ベテランの士業の先生を農業にたとえるなら、春に畑を耕し、夏に水やりと草むしりをして、実りの秋を迎えているようなもの。すでに次にまく“種”が手元にあり、新しい畑(=ホームページ)は不要と判断しているのです。
つまり「なくても大丈夫」は、仕組みが完成している人だからこそ言える言葉です。開業したばかりの先生が同じように考えてしまうと、スタート地点の差に気づかず、集客で苦労してしまうかもしれません。
マーケティングファネルとは? 〜見込み客が「依頼者」になるまでの流れ〜
開業したばかりの士業の先生にとって、一番の課題は「どうやってお客さんと出会って仕事を獲得するか」です。
このときにマーケティングで役立つ考え方が、「マーケティングファネル」と呼ばれる仕組みです。
マーケティングファネルとは、見込み客が実際の依頼者になるまでの流れを段階的に整理したものです。
下に行くほど“絞られて”いくことから、「ファネル=漏斗(じょうご)」という名前がついています。
具体的には、次のようなステップで成り立っています。
① 認知(まず知ってもらう)
先生の存在を「知らない人」に、まずは知ってもらう段階です。
名刺交換、セミナー、検索、SNS、広告、口コミなど、きっかけはさまざまですが、「名前を見たことがある」「こんな先生がいるんだ」と思ってもらうことが最初の一歩です。
② 興味・関心(なんとなく気になる)
次に、「ちょっと見てみようかな」と思ってもらう段階です。
ホームページを開いたり、ブログを読んでもらったり、SNSのプロフィールを見たり。「この人、どんなことをしているのかな」と、関心を持ってもらうところです。
③ 比較・検討(この先生で大丈夫かな?)
この段階では、見込み客は「この先生に頼むべきかどうか」を真剣に比較しています。その時に活躍するのがホームページです。事務所の特徴、プロフィール、経歴、料金や実績、得意分野、人柄などを他の士業のホームページと見ながら比べています。
④ 行動(問い合わせ・申し込み)
「この先生にお願いしよう」と思って、実際に問い合わせをするステップです。
ここでは、メールフォームや電話番号などの“導線”が整っているかどうかも大切です。現代ではホームページのお問い合わせが多いと言えます。
⑤ 継続・紹介(また依頼したい・誰かに紹介したい)
満足したお客様は、リピートしてくれたり、他の人に先生のことを紹介してくれたりします。
ここまで来て、はじめて“口コミが生まれる土壌”が育つのです。
新人の先生は、③〜④をどうやって突破するかがカギ
多くのベテランの先生は、この⑤「継続・紹介」の段階が強固にできあがっているため、あえてホームページを使わなくても仕事が回ります。
でも、開業したばかりの先生には、まだその基盤がありません。
一番上の「認知」や「関心」は自分の営業でなんとかなりますが、③比較・検討と④行動(お問い合わせ・申し込み)のステップで活用されるのがホームページです。
ベテランの先生の多くはホームページを持っていません。
しかし、多くの若手の士業の先生はホームページを持っていますし、一部のベテランの士業の先生もホームページを持っています。
お客さんはいくつもの先生と比較するので、新人の先生も“自分の情報の見える化”をして、比較検討の土俵に上がる必要があるのです。
先生がどんな人なのか、どんなサービスを提供しているのかを、誰でも見られる形でホームページに載せておくという必要があるのです。また、そのままお問い合わせに誘導する便利なツールになっています。
まとめ:ホームページは「名刺以上の自己紹介インフラ」
昔のホームページが浸透していなかった頃は、名刺やチラシ、看板で認知を高めたり、いいところに事務所を構えたり、飛び込み営業をしていました。
また、お問い合わせも固定電話を引いたり、メールアドレスを作るのが、昔のやり方だったのだと思います。
ベテランの士業の先生はそういう努力をしてきて、ホームページを持たなくても、“紹介が生まれる仕組み”を作っていきました。
一方、開業したばかりの士業の先生には、まだそれがありません。
だからこそ、自分を知ってもらい、信頼してもらい、仕事のきっかけをつくる場として、ホームページを用意することが大切です。
見込み客との接点を増やし、やがて“紹介が自然に生まれる流れ”をつくるために、まずはホームページから始めてみてください。